ジャンルとかカプとかそういう次元ではないごった感。
縦書き用に書いてた文章もあるので、一文の長さとかそういったあたりから既にカオス。
何が出て来ても許せる人だけ見て下さいね☆



Fairy tale 1

(新羅と臨也の話/ぶった切り) 「あのねぇ臨也。確かに君を人として最低だとは思うけれど決して嫌いだとは思わない。というより、ある意味俺は君を人として見ていないからそう思うのかもしれないけれど」 一息で言い切った。 「人じゃなきゃ、何なの?」 「強いて言うなら、妖精みたいなものだね。いたずら好きで、狡賢い。更に人間が大好きでちょっかいばかり出すところとか」 「妖精って。―――まぁそうか、君の最愛の恋人は名実共に妖精の一種だし、君のもう一人の友人は池袋最強の化け物だしね。丁度釣り合いが取れてるのかもねぇ」 嫌みったらしく。 「永遠の二十一歳だっけ? 十分人間じゃないよ」 特に意味もないが、明るく指摘する。 「失礼な。単に個人情報を無闇に提供したくないだけだよ」 唇を少しばかり尖らせた。 「ちょっと調べれば直ぐに分かるのにねぇ」 「それでも、だよ。しかしそうか…新羅は人間でないものとしかうまくやっていけないのか。妖精博士みたいなものだね」 「褒められている気がしないなぁ、臨也」 「いやいや、褒めてる褒めてる。妖精博士が妖精と恋仲だなんてロマンがあるんじゃないか?」 極めて投げやりに言う。 「そうだろうか…そうか。セルティとの釣り合いを考えれば闇医者と言うよりも妖精博士の方がしっくりくるな」 「よかったじゃないか、これで闇医者を廃業した後の人生設計ができるよ」 「ありがとう臨也。流石妖精は違うな」 お返しだ。 声には出さずに言う。 「褒められている気がしないなぁ、新羅」 「いやいや、褒めてる褒めてる。妖精と『化け物』の恋なんてロマン以外の何物でもないよ」 「…どういう意味だよ」 不機嫌そうに眉を寄せる。 「えー? 私が言うまでもなく了解済みの事象だと思っていたよ。大体君達露骨過ぎるんだから」 「いや、異論アリだ。先ず第一にこの文脈で化け物と言うとシズちゃんの事になるわけだけど、あれとそういった関係を築けるような『殊勝な輩』が居るとは到底思えないんだけど」 「殊勝な輩って、また新しい言葉遣いだね。持ち上げてるんだか蔑んでるんだか」 「感動しつつドン引きしてるんだよ。あれと? あんな理性の欠片も見られないような暴力魔と? 誰がどうやって恋仲になんか成り得るんだよ。そんな奴が居るなら顔を拝んでみたいね」 流れるような、罵倒。 「鏡、貸そうか?」 「要らない。いやー新羅、君の観察力には一目置いていたんだけど、勘違いだったかな」 「ありがとう、でも俺はきっと間違ってないと思うよ。君の心理推察は少し癖があるから、随分と本質を歪めて解釈しているところもあると思うし、 第一君は静雄に於ける人間らしさを完全にカットして物事を理解しようとするからぶれるんだよ」 人差し指でちょんちょん、と眉間を叩く。 「ぶれる? 何が」 「何もかもが君に対する悪意と暴力衝動だけで形成された行動じゃないんじゃないかな。彼の内側はもう少し繊細で人間らしいよ?」 「人間らしい、ねぇ。まぁそうか。人間のフリをして生きていかなければいけないんだから、少しは人間じみたことも出来るようになっていくだろうね。けど、それがどうしたの」 さらりと流した。 「…成る程。君は妖精に良く似ているけど、致命的に一点違いがあるみたいだね」 「そりゃ、人間だからね。仮定が間違ってる」 「君は人間が好きなんじゃない。心底人間という性質を嫌っているんだ。君は人間を愛していると言ったけれど、どうにも僕には、人間を憐れんでいるようにしか見えない」 「憐れむ事は慈しむ事だ。愛するとはそういうことだろう?」 大袈裟に言ってみせる。 「同じ高さに自分を置いていないんだよ。人間の醜さも愚かさも健気さも優しさも全部ひっくるめて『愛している』という言葉で蓋をしている。自分がそうじゃないから」 「その言い分で行くと、俺だって間違いなく人間だと思うけど」 「だけど君は自分に対して決して愛という言葉を使わない。無意識なのか意識的になのかは分からないが、馴染めない自分を見出しているんだ」 「心理学者にでもなったつもりかな」 「嫌だなぁ臨也。俺のことはただの主治医ぐらいに思えばいいよ」 「じゃあただの主治医がそこまで詮索する理由は何かな」 「ありていに言えば愛しているから、だよ」 「愛、ねぇ」

Fragment

(シズ→イザ書き溜め) 諦めが悪いのは性格だった。 スポ根みたいな熱い物じゃなくて、もっと粘ついた、恨みがましい物だ。 それを「未練」と人は呼ぶ。 「もういい加減分かっただろ? まだ俺とやり合って勝つ気でいるの?」 臨也はとてもうんざりした様子で言った。 俺は黙っている。 何か言えば三倍にも四倍にもして言い返されるのだから、こうしているのが正しい。 「まさかこの期に及んでそれはないよね。じゃあどうしてかな」 革靴で踏まれている左手は確かに痛かった。 絶対に折れはしないが、全く痛まないという訳でも無いのだ。 脂汗が滲む。 「何とか言ったらどうなの」 言ったら言ったで怒る癖に、そんな理不尽なことを言う。 / あいつは夜に紛れるのが上手かった。 昼間はどれだけ人が居ようと直ぐに見つけ出せるのに、夜になると急に見えづらくなる。 別に夜目が利かない訳ではない。 見えているはずなのに、頭の中で、夜の空気と折原臨也を区切る線が引けない。 まるで背景と同化してしまったかのように境目が分からなくなってしまうのだ。 あれは夜その物なのだ。 漠然とそう思った。 夜の懐に入り込んでしまえば、そこから引きずり出すことなど大凡不可能に近い。 海の中で「特定の水滴」を探せないのと同じ事だ。 / 寒い寒いとぼやきながら街を歩いていたら、やたらと飲み屋の看板が目に付く。 ビールを筆頭に苦い酒は飲めないので、未だに外で一人酒はしたことがなかった。 ただ、今日は何だか気が滅入っていたのもあって、あまり抵抗もなくふらりと暖簾をくぐった。 林檎酒を飲みながら軽くつまむ。酒だけ呷るのも胃に良くないので肴程度には食べることにしたのだ。 『そんな安い酒ばっかり飲んで楽しいの?』 あいつならそんな風に言いそうだ、と思う。 ろくに会話が成り立たないせいで、想像力だけが逞しくなってしまった。 正に『失恋を拗らせた』結果である。 「別に、楽しくねえよ…」 酒の良し悪しなんて分からない。高くても安くても味の違いが分からない。 なら安物でいいや、というだけなのである。 臨也は多分、この間一緒に居た 『どこからどう見ても堅気じゃない』連中と馬鹿高い酒でも飲んでいるのだろう。 蘊蓄やら来歴やらを云々されつつ、にこにことしながら手酌でもするのだ。 ―――はぁ、やめだやめ。この手の事を考え出すと悪い方向にばかり想像しちまう。 それにしても、今日は誰と話していたのだろう。 自販機をもろに喰らうまで気付かないほど話に熱中するような相手なんて想像も付かない。 あの時はそんなことすら確認する余裕もなく、近くにあった物を思いっきりぶん投げてしまっていた。 我ながら短気にも程がある。自己嫌悪を飲み下すように、グラスを空けた。 /

Doppelgenger

(冒頭だけ書いて飽きた) 自分と同じ姿を見かけるのは、死期の予兆だと言う。 或いは、自身に覚えのない場所で瓜二つの影を誰かが見るのだとか。 等価にして対等な幻が、同時に存在する。 その不均衡が、結局当人を病ませ、死に至らしめる。 らしい。 随分と昔から取り沙汰されている代物にもかかわらず、噂として常に自分の耳に入ってくる。 情報屋として取り扱うのは流石にどうかと思うが、しかし一定量の情報は常に流れ込んでくるのである。 この現代の、それも科学万能思想に侵された大都会で。 正直に言えば、真実は半分しか含まれていないと考えている。 夢遊病の一種か妄想癖か。 自分の記憶に無いところを彷徨っていたのは、朦朧とした状態の自分だ。 自分の姿が見えた気がしたのは、想像が勝手に脳の内側で像を結んだからだ。 ドッペルゲンガーが見えたから死んだのではなくて、死ぬ直前の幻想を見ているだけなのである。 ―――と、言えたのはほんの一昨日までの話だ。 「あれ、臨也…昨日も来なかった?」 二日連続でお疲れ様、と言われたことに違和感を覚え『昨日は事務所から一歩も出てないけど?』と念押しした結果である。 「そんなはずは無い。俺は昨日一日中事務所内の仕事を―――」 しかし、冷静な思考が記憶に蹴りを入れる。 証人が居ない。商談もなかった、波江さんにも昨日は休みを取らせた。 つまり、自分が事務所に一日中居たことを証明する手立ては何一つ無い。 仮令一日分の仕事が終わっていたとしても、それが昨日やったものだと誰が納得する。 「…記憶障害か…?」 首を捻る。 「え、それ大丈夫?」 そう、俺がここに来た事なら証言する人間は居るのだ。 新羅が性質の悪い冗談を言っているのでなければ俺は昨日「ここにいた」ことになる。 頭割ってみたらわかるんじゃないの? ふざけた調子で額をノックしつつも、目が割に真剣だ。 「ああ、頭をかち割って記憶を引き摺り出したいぐらいだよ」 そんな荒療治、いくら僕でも勧めないよ。困ったように新羅は笑う。 当然だ。記憶はそんなところにはない。電気信号の羅列が解読されて初めて記憶になるのだから。 「じゃあ新羅、昨日の代金は俺、きちんと払ったかな」 何せ覚えがないのだから一応確認しておきたかったのである。 「未払いだって吹っかけても良いんだけど、それは良心の声が咎めるね。ちゃんと払ってたよ」 「そっか。それなら良いんだけど―――」 「ああ、臨也」 遮るように名前が呼ばれる。 「なに?」 すると、今までで一番言いにくそうに 「えっと、昨日さ。ここに君を連れてきたの、静雄なんだけど…それも覚えてない?」 とんでもない爆弾を投下した。 新羅には言っていないが、少し、変な夢を見たかもしれない。 それも、シズちゃんの出てくる夢だ。 作業をしながらだったと思うのだが、ぼうっと意識がどこかへ行ったのだ。 集中が切れたのか集中しすぎていたのか細かいところは忘れたが、兎に角何かを見た。 しかし記憶が曖昧だというのと、それが一体何の証明になるのかと思って言わなかったのだ。 「けれど」 新羅の言うことが正しいなら、俺は昨日シズちゃんと一緒に居たことになっているのだ、それが一瞬なのか一日中なのかはさっぱりわからないが。 夢。 何か関係が有るんだろうか。 それとも、全く無関係に見ただけなんだろうか。 考えても何も進まない。 当然だ、自分の覚えのない事をどれだけ考えても建設的な答えは出まい。 一旦は忘れて、仕事に専念することにしよう。

99 feaver!

(九十九屋ごっこしたかったときの残骸) 恐怖心ってのはまぁ要するに生き残るために必然的に獲得されてきた感覚だと思うんだ。 暗闇で何か出るぞ何か出るぞ、という恐怖は結局捕食者から逃れる為の警戒心の変質なんだよ。 ということは元来強者には必要のない感覚だったりするわけでね。 警戒心という意味では、折原臨也は致命的にそれが足りない。 別に彼は生物学的に殊更に優れているわけではないんだから、本来は人並み以上に警戒すべきなんだけれどね。 その割にあっさり背後から刺されていたりするから、やっぱりその辺の感覚が鈍いんじゃないかって思っている。 いや、単に俺が思ってるだけじゃないよ。 確実に彼は警戒心が足りない。 だから怖いはずの物も全く怖がらない。 高いところも平気。 ほら、何とやらと煙は高いところが好きだって言うだろ。 あれ、警戒心が足りない何とやらのことを言ってるんだよ。 まぁそんなところも含めて俺は折原臨也っていう人間性を好ましく思っている訳だ。 やっぱり完璧過ぎるより多少抜けている方が可愛げがあるという物じゃないか。 しかし余りにも恐怖心がないというのも考え物なので少しばかりお灸を据えてやることにした。 我ながら優しさの塊過ぎて涙が出る。 情に厚すぎる。 良い友達を持ったな、臨也。 と言うわけで、鬼ごっこでもして貰おうか。 それも、本物の化け物と、ね。

Red No.3

(モブ臨…的な) 教室の机の上に、黒の詰め襟を着た少年が座っている。 本来、机の上は人が座る場所ではないのだが、学生という連中はそういった事を敢えてやりたがる物である。 ましてや、『優等生』という部類では無い少年に、常識やら何やらと言ったことを説教することなど無意味に等しい。 言って聞く相手は最初からそんなことはしない。 少年は窓の外を眺めていた。 夕刻の茜色が彼に遮られて、一人分の暗闇を作る。 その中からずるりと何かが這い出してくるような気がして、背筋が寒くなった。 幻覚だ。 実際に見えもしない物を勝手に想像して感じる恐怖。 しかし、それがただの妄想だと切り捨てるのを躊躇うほど、現実的な質感を持った幻覚だった。 「いつまでそんなところにいるんだ。もう下校時刻を過ぎたぞ」 教師という身分が口を開かせる。 否。声を掛ける口実として自分の職務を持ち出しただけだ。 腹の底に湧いていたのは抑えがたい好奇心だった。怖い物見たさにも近い。 或いは、既に彼の『手の内』だったのか。 気付いたときには、もう後戻りの出来ない迷路の中で途方に暮れるしかなかった。 倫理、という物をあまりに簡単に飛び越えさせる。 「でも先生、僕が卒業したら全部無かった事に出来るんですよ?良かったじゃないですか」 愛した笑顔は、今更、とても不気味な物に思えた。 「折原」 「生徒と―――それも男子生徒と爛れた仲になっていただなんて、とてもオープンにできる情報じゃないですよね」 愛した聡明さは、今では凶器にしか見えない。 違う、最初からだ。 最初からこの男は―――折原は俺にとってよからぬ物でしかなかった。 「大丈夫ですよ、僕だって別にばらして良い事がある訳じゃないですし」 それだけ言って、折原は部屋から出て行こうとした。 引き戸に手を掛ける。 ゴム底のシューズが床にこすれてきゅっと音を立てた。 殺してしまおうと思った。 今すぐこいつを殺してしまわなければと思った。 ―――そうでなければ、自分が駄目になってしまうと思ったのだ。 殺した先はどうすればいんだろう。 分からない。 けれど、兎に角この端正な顔をした化け物を、綺麗な仮面を被った悪魔を、目の前から、消してしまわなければ ―――そうしろと、良心の声が囁くのだ!  机の上に有った鋏を手にとって握りしめる。 これで勢いを付けて刺せば、恐らく、 「ねぇ、先生。この場にある物なら灰皿が一番凶器として適切ですよ?」 振り向いた笑顔の不気味さを表現する適切な言葉をきっと俺は一生見つけられない。