※生クリームぷれい…笑
えろくなくてもやることやっちゃってるのでR指定。


so sweet, too sweeeeeeeeeeeet!

「シズちゃんってさ」 浅く息を吐く合間に、臨也は呟く。 軽く握ると、指が油っぽく滑る。 目の前が、兎に角白い。 「良くも悪くも、正直すぎる…よね」 どこか困ったような、呆れたような様子だ。 ただまぁ、この状態で何を言われたところで気にもならない。 ベージュ色のエプロンに染みが出来そうだな、とぼんやり思ったが、本来エプロンとは染みになっても良い物だった気がする。 「ていうか何なの。我が儘放題、やりたい放題」 毎度毎度本当によく回る舌だ。 「君は何様のつもりなんだ…っあ」 いい加減煩いので、黙らせる。 ああそうだ。 最初から大人しくしてりゃ良いんだよ。 見た目だけは、悪くねぇんだから。 / 「はぁ!?意味が分からないんだけど」 思わず声が裏返った。 だがこればかりは俺のせいではない。 全て、目の前でふんぞり返っているあの男が悪いのだ。 「うるせぇよ。良いじゃねぇか、どうせそんな面倒な事でも無いんだろ?」 未だ紅茶の入ったマグカップを、少し強めにカップボードに置く。 さも俺の態度が良くない、と言いたげな顔だ。 冗談じゃない。 「いやいや、シズちゃん…君、自分がやらないとなると急に強気になりすぎだよ」 考えても見ろ。 自分が出来ないことを人様に頼む時に、そんな態度って無いだろ。 親に一体何を教わってきたんだこいつは… 「…いや、だってお前料理得意なんだろ?」 拗ねたように言う。 そうか、礼儀は習わなかったが「おねだり」は覚えてきたんだな。 何とも立派な教育方針だ。 「苦手だとは言わないよ、でもそんなに言う程得意って訳でも無い。というか別に趣味とかではないよ」 だがしかし、それに流される俺ではない。 おねだりはする物であってされる物では無い。 それが自然の摂理という物である。 「…良いじゃねぇか、別に減るもんでもねぇんだし」 出た。 人に物を頼む時に絶対言うべきでない台詞をがっちり押さえてきたな平和島静雄。 「確実に俺の時間が浪費されてるよシズちゃん。…大体、何で手作りじゃないと駄目なの?お店で好きなの買ってくればいいじゃない」 正論だろう? しかし、彼は随分と難しい顔で考えた後、 「…作ってるとこが、見たいんだよ」 などと呟く。 「…………はい?」 さっきと微妙に要求内容が違う。 それも、よりおかしな方向に話が進んでいる。 「………なんだよ」 じとっとした目でこちらを見られても困る。 俺は、何一つとして悪く無い。 悪く無いはずだ。 「ごめん…余りに斜め上過ぎて…」 抑も、食べることが目的じゃない辺りが理解不能すぎるんだ。 「…………悪い、か?」 開き直りやがった…! 「…はぁ…なんか馬鹿馬鹿しくなってきた。…材料費は全部出してよ?」 そして結局折れてしまう自分が不甲斐ない限りである。 どうしてこう、つい甘やかしてしまうんだか、不思議だ。 頭を悩ませても、いつも適切な答えが出ない。 / 「…それが、どうして…こうなったんだか」 作っている最中にまさか生クリームを浴びせられる事になるとは思わなかった。 まぁ、それに関してはシズちゃんに泡立て器を任せた俺の失態だと言えなくもない。 あ、と声が上がるや否や、俺もシズちゃんも結構派手に生クリームを被った訳である。 問題は、そこから先だ。 『…なぁ、臨也』 とシズちゃんが大層不穏な表情をしたかと思ったら、その瞬間に俺は床に引き倒されていたのだから、うっかりしていたにも程がある。 剰え、『手前、すんげぇエロい』とストレート過ぎるコメントに思考が停止したなんて迂闊としか言い様がない。 ああ、そうだ。 全体的に迂闊だったのだ。 『君の方が随分と扇情的な顔してるけどね』とか言うんじゃなかった。 完全に口が滑ったのだ。 結果、この様である。 「…ねぇ、シズちゃ…っ聞いて、る?」 何が悲しくて、尻の穴に生クリームなんて突っ込まれなきゃならないのだ。 親御さんにきちんと習わなかったのだろうか。 それは、食べ物を入れるところではないよ、断じて。 抗議の視線を向けるも、相手にされていないようだ。 「…君さぁ…やっぱり変態だよ。人様の身体に生クリーム塗りたくって興奮するとかあり得ないだろ」 始めは、それこそ顔とか手とかに付いた生クリームを舐める、位の「可愛らしい」お巫山戯だったのだ。 なるほど、シズちゃんは割とファンシーな幻想を抱いているようだからその位許してやろうか、とか思っていたのが大きな間違いだった。 シズちゃんは、あろう事か徐にボウルから生クリームを手にとって、べしゃり、と太腿にぶちまけたのだ。 まあ服の上からだったらクリーニング代を請求してやろうと思っていたんだが、そこは心得ているのかご丁寧に脱がされた後の話だ。 指で伸ばすわ、舌で舐めるわ、もうやりたい放題にも程がある。 そして悲しいかな、もう既に一回イかされた後なのである。 「じゃあ生クリームでべたべたになって興奮してるのはもっと酷いだろ」 断じて『臨也、生クリーム好きぃ』とかそういった理由ではない。 単純に、慣れない感触に戸惑っているだけなのである。 ローションよりは随分と固体寄りな割に、直ぐに水っぽくなる。 あとは―――強いて言うならば、やたらノリノリなシズちゃんに「中てられた」のかもしれない。 あれは一度鏡を見てみると良いよ、とんでもない顔してるから。 「あのねぇ…そういうんじゃないから…って!ちょ、指…指っ!」 思わず悲鳴のような声が出た。 「ん?」 何事も無いかのような返事だ。 冗談じゃない。 「急に…増やさない、で…」 ぐちゅぐちゅと、おかしな音がする。 そうでなくとも妙な感じがしているのに、これ以上慣れないことをしてくれるな。 「入るだろ、ほら」 こちらを見もしないで夢中になって指で掻き回す。 くそ、ガキめ。 時折、「良いところ」を掠められるのが辛い。 彼は彼のやりたいように指を動かして、その感触を楽しんでいるだけなのだ。 まるで、珍しい玩具でも見付けたかのように。 「だから、遊ばっ…ないで…よ」 実際シズちゃんにそのつもりが有るかどうかは知らないが、都合良く焦らされているような格好になっているのが気にくわない。 不安定な熱がじわじわと腰の辺りを重くする。 「だって…手前」 ずるりと指を引き抜いて、シズちゃんは急に目を合わせた。 「…なん、だよ」 思わず声が上擦ったのが悔しくて堪らないが、ここは大人しく聞いて――― 「―――いつもより、良さそうだったから」 ………なんだって? 今とんでもない言葉が聞こえた気がしたんだが、気のせいだ。 きっと気のせいに違いない。 「何…いって」 「けど…さ」 そこで一瞬息を詰めるような間が空いて、 「…悪ぃ…もうそろそろ、限界」 僅かに細められた目に、抑えがたい欲。 ―――大層腹立たしいことに、俺は要求を断る術を知らなかった。 / 「二度と。金輪際一切君のリクエストには応えないことにしたからね」 極めて忌々しげに臨也は言い捨てた。 「…いや、悪かった」 余りの温度の低さについ下手に出ざるを得ない。 確かに、作れと言っておいて、作りかけの状態で色々やってしまったのでこればかりは仕方ないのかもしれない。 ただ…あれは、俺だけが悪い訳じゃないと言いたい。 そう。 俺が全く悪く無いとは言わないが、正直な所、臨也もほぼ共犯のようなものじゃないかと思う。 「反省するなら、最初からするなよ」 それはそうだ。 「…おう」 すると、臨也は深く、深く、溜息を吐き、 「暫くは、『お預け』だよシズちゃん」 と目が全く笑っていない笑顔で宣告した。 「………………おう」 不本意ながら、同意せざるを得ない。 これ以上機嫌を損ねるのは自殺行為である。 心の中で納得の行かない思いを抱えながら小さく溜息を吐く。 生クリーム無しのシフォンケーキは、どうにも甘さが足りなかった。

書きたいとこだけ書きました、先生。 始めは最初から最後まで静雄視点の予定でしたが、予想外に変態臭くなったので急遽臨也視点に変更したという…。 静雄に乗り移りすぎである笑 2010/04/10