※特に深い意味はない。 この場合、死ぬって言うのはつまり霰弾を打ち込むのと同義だ。 愛だの何だのという柵から逃げ切る為の最良にして最悪の手段だ。 傷口を広げ、醜い跡を残し、破片が奥深い部分にまで刺さり込んで、取れない。 「生きている人間は永久に勝てない」 既に死んだ人間の、絶対性に勝てない。 揺るがぬ思い出としての神聖性に勝てない。 酸化していく記憶は美しく甘い部分だけが残っていく。 そのご都合主義に勝てる者など居ない。 だから、俺は「殺す」という言葉も甘んじて受け止めてきた。 彼は自らの手で俺を殺すと言ったのだ。 俺を殺した瞬間に、彼自身の未来をも抹殺するという事に気づきもせずに、闇雲に、一途にそう言うのだ。 快感だった。 愚かしくも愛おしい化け物。 自分の手で、自分の心に、未来に、決して癒えない醜い傷を作ろうとする。 しかし同時に、彼が本心からそう言っているのでないことも分かっていた。 人を簡単に殺すだけの力がありながら、人並み外れて臆病な彼には、そんなことはできやしない。 最初から、全部分かっていた。 全部、全部。 それでも彼の言葉を鵜呑みにした。 お互いに、口に出している言葉だけが真実であると受け取った。 推測の苦手な化け物と、推測しかない人間が、お互いに本音を口にしている物と、決めきっていたのである。 「じゃあ殺せばいいだろ。殺して御覧よ、本当に君に出来るならね」 首に手を掛けた化け物は、急に怯えたような目をする。 馬鹿な奴だ。恐いなら、最初からそんな真似、止めておけばいいのに。 「臨也、てめぇ…」 喉仏を親指が軽く押さえる。 気道が狭まる感覚に、眉を顰めた。息苦しい。でもまだ十分耐えられる。 「ほら、あと一押しだ。君なら一瞬だろうね」 自分に出来る限りで最も外道な表情を作ってやった。 怒りに我を忘れて、殺せばいい。 そして一生後悔させてやる。 お前の中で決して消えない呪いになってやるよ、平和島静雄。dead end love
―――だから君には一度たりとも愛しているなどと言ったことはないのだ。放置がすぎた。 /ログとして取り込み。やっぱり長期放置になってました。恐ろしい。 2010/09/04(2011/02/05格納)