※シキイザだよ 見えなくても 四木さんと臨也だよ ド短編だよ。


『斜線』

「で、折原さん。言い訳は準備できたんですか?」 煙草をふかしながら男は言った。 非常に脂臭い、典型的な煙草の匂いである。 「言い訳、とはまた随分と人聞きの悪い言い方ですね」 こちらは腕を組み、身体を壁に凭れさせて、男の話を聞いている。 実を言うと、普通に立っているのが少しばかり辛いのである。 ―――諸事情有って。 「言い訳、でしょう」 ふ、と煙を吐き、 「そんな無粋な痣付けたまま来るなんて、とても度胸がお有りのようだ」 と酷く冷たい目でこちらを睨め付けた。 爬虫類の目だ、と思った。 時折、自分もこの人と同じような目をしているのだろうかと思うことがある。 「これはこれは。四木さんともあろうお方が珍しいですね」 そう言うと、苦々しい顔で軽く舌打ちをする。 彼とはもっとあっさりした付き合いだと思っていたのだがどうやらそうでもなかったようだ。 まぁ確かに付き合いの長さで言えば彼が群を抜いて長いのだから浅くはないだろう。 しかし、深い付き合いかどうかは議論の余地がある、と思っている。 「はぐらかすな、餓鬼」 苛々とした様子を見ても、恐ろしいと思うより先に、愛おしいと思った。 昨日大きな諍いがあったと聞いている。 そのストレスだか何だか知らないが、彼は今日殊更に余裕がない。 そんな観察が出来る程には、この人にも慣れてしまった。 「そんなつもりは無いですよ。ですが、本当に驚いてるんですよ?」 自分にも、彼にも。 「―――何に」 再度吐き出した煙は静かに立ち上る。 「貴方が私個人に興味がお有りだなんて、思いもしませんでしたから」 わざと白々しく言ってやった。 それこそ愛人紛いの関係まで持っている相手に対しての科白。 日頃の憂さ晴らしも兼ねて、芝居がかった口調で。 「…食えない餓鬼だな」 極めて苛立たしげに言う男を前に、 『貴方がそんな風に教育なさったんでしょう?』 と視線だけで語ってみた。 ただ微笑を浮かべ彼に相対する。 「何が欲しいんだ、今日は」 本日五本目の煙草に火を点けた男に、 「貴方が、少々」 と、甘えたような調子で言う。 それも、べったりと甘えるのではなくて、仄めかす程度に。 「本当に、食えない」 言葉こそ不機嫌そうだが、表情も口調も、どこか愉快そうに聞こえた。 食えないのはお互い様である。 しかし、それを愉しいと思えるぐらいには、お互いの事をよく知っているという訳だ。 「そう仰らず、どうぞ、召し上がって下さい」 教えられたとおりの笑い方は、相変わらずお好きなようだ。 好みの余り変わらない彼に少しばかり安心して、灰皿の中の煙草の山に視線を落とした。 ―――煙草の吸い方は 付き合い方と同じ

先日うっかりついったにupしたのを微妙に訂正。 しかし、何だろう。 私の中のシキイザが大いにずれてる気がする。 妄想補完部分が大きければ大きい程ずれるよね。 まあ真理ですよね。笑 2010/06/05