縁側で、ぼんやりと腰掛けていた。
夕暮れの空の微妙な色合いが、とても好ましく思えたのだ。
陽が落ちるその瞬間を、私はとても愛した。
兄を、愛したように。
「…お前」
背後から声がした。
「何ですか?」
見上げると、つい先ほどまで寝ていました、といわんばかりの男が立っていた。
右頬の畳の痕が少し間抜けで可愛らしいな、などと思う。
「いや…それ」
視線が一点で留まる。
あまりにも真剣な眼差しに、疑問符が浮かぶ。
「どうかしたんですか…?」
返事をよこそうとしない彼に少し不安になる。
何か、問題があったのだろうか。
すると、彼は徐に背後に屈み、脚の内側をすう、と手でなぞった。
「綺麗な脚だな…」
神経に響く声。
彼の純粋な称賛が、かえって何かとても卑猥な事を言われたような気分にさせた。
「…イギリスさん」
思わず情けない声を出す。
だが、これ以上何か言われる前に、話題を変えなくては。
「あ…いや、別に変な意味じゃないぞ」
どうやらこちらの意図に気付いたらしく彼は慌てて取り繕った。
だが、その指は尚も内股を滑る。
「あっ…!」
変な意味以外を見いだせないような手つきに、うっかり妙な声を上げてしまう。
「…なぁ……日本」
言い訳をする前に彼の瞳に射られて、言葉が思い出せなくなる。
早々に降参し、目を閉じた。
かしましい蝉の声だけが、響いた。
/
蝉が鳴く。
煩いその鳴き声に頭痛さえ感じながら喋り続ける。
自分の言葉が途切れると、一応は心配するだろうから。
「それで、我は…」
虚ろな目。
見ているのはどこか遠くの世界だ。
「…日本、聞いてるあるか?」
少し強めにふくらはぎの辺りを指で押しながら問い掛ける。
顔を顰めた。
だが、抗議はしない。
「…ええ、聞いてますよ」
物覚えが良く、器量も良い。
他に比べれば大分忠誠心に欠けるが、反抗的な所も慣れれば可愛かった。
いや、昔に比べれば表立って反抗しなくなった。
目付きは反抗的なままだが。
「どうだか」
だが最近急に大人びてきた弟分に、少し心配になる。
…明らかに、悪い虫が付いた。
それも、最大級に悪いのが。
「お前、まだアヘンと付き合ってるあるか」
案の定視線を逸らす。
やっぱり…お前のしそうなことぐらい、全部わかる。
「彼は…とても物知りですし…」
そうやって、日に日に西洋に殕ていくのを黙って見ているのは、いい気分ではなかった。
お前に物を教えたのは自分なんだと、言ってやりたかった。
何も知らなかったお前を、こんな風に育ててやったのは誰だと思ってるんだ。
「あんな野蛮な奴等…さっさと出て行けば良いある」
少し愁いを帯びた表情には気づかない振りをした。
「お前は、良い子なんだから」
軋む様に鳴く蝉が、握り潰したいぐらい苛立たしかった。
わたしのしらないあなた
脚が綺麗なのは中国の趣味だからだよ。(笑)菊の身体は兄貴が手入れしてくれるんだぜ(色んな意味で)
後半はちょっとした中日(笑)
因みに、日本に男を教えたのは他でもない兄貴だと思っている。間違いない。
小さい頃から折につけて色々教えたに違いない。兄貴とは超プラトニックな関係でも良いし、或は激しく爛れた関係でも美味しく頂けます。
追記
そう、にーにはこんなイメージ。