「こないだはありがとうねぇ、日本」
白と青のストライプのシャツ。
その上にベージュのジャケット。
すらりと長い足を同色のパンツが包む。
靴はしっかりとした作りの革靴。
如何にもはき慣れている、という空気を漂わせている。
「いえ、お気になさらないで下さい。フランスさんに気に入って頂けたなら光栄ですよ」
彼は欧州が誇るお洒落大国、フランスその人なのである。
当然のことながら、寸足らずな日本人を代表する私には到底似合わないような服をさらっと着こなす。
口説き方も洗練されている。
が、洗練されすぎて時に理解の限界を超える。
食べることに対する愛着と、芸術に対する理解と自負。
未だ文化の中心地としての誇りを持っている。
ワインが、大好き。
「こう見えて俺は日本のポップカルチャーに対する一番の理解者だと思うよ。と言う訳でプリキュアの」
「その話は後にするでゲイツ」
そして、我が国にとって重要なライトカルチャーの輸出先である。
「つれないねぇ」
「いえ、釣りです」
キリッ
「な…なんだと…!」
予定調和のオーバーリアクション。
「ふふふ、甘いですよフランスさん。プリキュアの前に経済のお話です」
あなたの産業ハートキャッチ♪
とか言って。
あーあ、私疲れてるんですね。
「ええー、やだよー。お兄さんもうそういう世知辛い話したくないよ−」
いい年こいた(見た目の)金髪美形が何を仰る。
やだよー、とか言って良いのは二次元まで。
「私だってしたくないですよ、出来るならもう二次元の嫁とだけ向き合って生きていきたい」
そうだ、二次元。
二次元に行こう。
もう経済とか外交とか上手く行かないことは放っておいて二次元の嫁と暮らす。
「ちょ、それは待って。お兄さんと位は喋ってあげて」
はいはい、一人称お兄さんの萌えキャラとぐらいなら喋ってあげなくもないですけどね−。
でもツインテールには敵いません。
ああ、ツインテール、ツインテール萌え。
ツンデレ+ツインテールとか勝ち組以外の何物でもないじゃないですか。
はい萌えた、今私萌えた!
「善処します。…大体フランスさんだって、どうせこんなじじいよりもあずにゃんの方が好きなんでしょう」
まぁあずにゃんは俺の嫁なのでいくらフランスさんと言えど譲るつもりは微塵も無いですけどね。
はは、ザマァ。
「あずにゃんは可愛いけど日本とは次元が違うじゃない」
…なんだと。
「何ですって。次元が違うからといってあずにゃんdisるおつもりですか。宜しいならば戦争だ」
俺の嫁を侮辱する奴は何人たりとも許さぬ。
出入り禁止。
ハイテク機器の輸出禁止。
経済大国の底力、今御覧に入れて差し上げ―――
「俺たちが言うと洒落にならないよ!」
「は…! 私としたことが取り乱しました。しかしあずにゃんは可愛い 以上」
いけない、いけない。
いい年こいたじじいが何をやってるんだか。
「いや、あずにゃん嫌いな奴とか見てみたいけれども、そうじゃないでしょう」
「これ以上何かありますか」
物忘れが激しくなってきましたからねぇ。
何の話だったのか本当に分からないっていう。
うはwwww サーセンサーセン
「ありありだよ、全くもう。こんどお兄さんち観光するって言ってたじゃない、その話とかも詰めたいしさぁ」
「あれ、ビジネスの話だった気が」
とか言ってね。
二次元以外にもちゃんと考えてること有りますから。
大体商談とか忘れる訳無いじゃないですか。
真面目が服を着て歩いているとまで言われているのだから云々。
「気のせい気のせい」
知ってますかフランスさん。
あなた、私に『騙されて』ほしい時はいつでも左手をポケットに入れてるんですよ。
気付いててやっているのか、気付いていないのかまでは分かりかねますが。
「ですよねぇ」
ただ、どうして欲しいかだけ伝わればそれでいい話なんですけどね。
あーあ。
じじい空気読んじゃった。
ビジネスの話は旅先に持ち込みですねぇ…全く。
「そうそう。でさ、モンサンミッシェルの―――」
嬉しそうにしちゃって。
まったくとんだお兄さんですねぇ、フランスさん。
「ありきたりな日常」
習作仏日でありんす。
病んだ話ばかり書くのもあれなので、たまには明るめな話を。
2011/01/14