僕が、怖いのかなぁ。
誰も彼も、この手をすり抜けていくんだ。
その手を取れるのは、私だけよ、兄さん。
私と兄さんが一つになれれば良いのよ。
………すみません、それは他所でやっていただけませんか。
「ヤンデレの妹君だなんて、あなたにしては最近の流行を解っていらっしゃる」
ヤンデレ、という一種の符牒らしき単語を呟く。
「ヤンデレ………?」
最近少しばかり彼の家の事に詳しくなったが、高度な単語はやはり解らない。
問うように首を傾げて見せた。
「………そんな純粋な瞳で見ないで下さい」
少し顔をしかめると、彼は溜息をついた。
「それに、」
…あなたもその範疇ですから、と付け足して。
「僕とベラを、キミのとこでは一括りにしちゃうんだね」
釈然としないなぁ、と反論する。
括ってほしくない相手第一位を爆走中の妹と一括りにされているというのはどうも…
「良いじゃない、兄さん」
背筋が冷えた。
ああ、シベリアとどっちが寒いかな。
君はどう思う?
「どうせ一つになるんだから、良いじゃない」
土台が美人なのは、この際欠点に数えても良いんじゃなかろうか。
…凄みのある図なんだ、ほんと。
「それは良かったじゃないですか」
無責任に笑っているのは相当薄情だと思うんだ。
「キミさ…」
自分に利害関係が無いからって、その態度は酷いんじゃない?
勿論、途中からは小声になったけど。
「良いじゃないですか、麗しい兄弟愛ですよ」
一度、彼女から昼夜を問わない来訪をうけてみれば考え方も変わると思う。
寧ろ、変わらないならさっさと一つになっている。
「兄弟愛じゃないわよね、兄さん」
含みのある笑い方が大層堪えた。
だめだ、あまりそばに居たら確実に神経を病む。
「いや、だから…」
「ああ、禁断の関係ですね、分かります。という訳で私は退散させて…」
最後まで言わせまいと腕を掴んで引きとめた。
「今ここで僕を見捨てるって、どうかと思うよ」
無論、小声だ。
「見捨てる?いえ」
純愛は応援するものでしょう?
…彼の首を絞めて、自分の物にしてしまっても許されるような気がした。
「極寒諸事情愛憎理想」
前サイトの拍手お礼だったとか マジ 勘弁。
地味に加筆訂正。
2010/08/20