私は外面の良い方だと思う。 その為に努力を重ねているのだから、そうでなくては困る。 嫌な顔一つせずに面倒な相手とも付き合っている。 殴りつけたいと思いながら、微笑む。 上手くやっていく為には必要なことだ。 出来なければ、世界に弾かれるのだから

貴方なんて嫌いだ

にこにこと、彼は微笑んでいる。 全く、何を考えているのか想像も付かない笑みだ。 其れが、非常に不愉快だった。 「…なんですか?」 「ふふ、別に。君と居ると楽しい気分になるだけだよ」 驚く程真実味のない台詞に苛立った。 彼と居ると、どうしても落ち着かない。 本能が常時警笛を鳴らしているのだ。 本当に、煩い。 私は、彼が怖いのだろうか。 或いは、単純に嫌いなだけだろうか。 「ねぇ、いつまで彼に媚びへつらうのかな?」 はっと顔を上げるとさっき以上に機嫌の良さそうな彼と目があった。 「―――不愉快な言い草ですね」 言い方こそ気を付けた物の、表情までは上手くできない。 恐らく、引きつったような顔にでもなったのだろう。 「だってそうでしょう?かつての君はもっと格好良かったよ」 彼は相変わらず微笑みながら、ただ、すっと目を眇める。 それだけの仕草に恐慌状態に陥りかけた。 「今の私は、彼に生かされているような物ですからね」 声が震える。 確かに、情けない。 昔の私なら恐らく、もっと気を張っていられたかも知れない。 「…なら僕が君を管理すれば良かった?」 酷く、喉が渇いた。 笑え、笑うんだ。 上手く笑えなくても、「笑っている」という状態を保たなくては。 「其れはもっと御免被りたいですね。私が私では居られなかったでしょうから」 冗談だ、とも言わず彼は此方を眺めている。 さっきの発言は本気である、と。 そう言いたいのだろうか。 「―――今の君は君じゃない。少なくとも僕に刃を向けてきた君じゃない」 痛いところを突かれた。 「私は平和主義者になりましたから」 駄目だ。 何か言い返さなくては。 「嘘だね」 「どう思おうがあなたの勝手ですよ」 冷や汗が出そうになる。 下らない、これしきのことで。 私も鈍った物だ。 「…僕はこれだから君が欲しいんだよ」 貪欲な、獣のような視線。 吐き気がした。 「何が、ですか?」 もう駄目だ。 表情が作れない。 「ふふ…飼い慣らせない獣なんて魅力的じゃない?」 どちらが獣だ、と口が滑りそうになる。 彼と居るとどうにもテンポを乱される。 「私は誰にも飼われた覚えはありませんよ」 そう、件の同盟国にだって飼われているつもりはない。 「ああ、益々君が欲しいな」 「願い下げです」 「つれないね…まぁ、彼に飽きたら僕の所においでよ。可愛がってあげる」 取り繕うのも面倒になってきた。 この人との関係が悪化しようがもうどうでも良い。 お互い様じゃないか。 「結構ですよ。きっと彼の方が幾分か私の為になります」 「あーあ、彼に見せてあげたいね、今の君を」 相変わらず、機嫌良く笑っている。 「見せ物ではありませんよ」 相手に合わせるように、笑った。 「なら、僕だけにそんな風に振る舞うのかな?」 頬杖を付く彼は、ただただ、楽しそうだった。 「ええ、恐らくあなたは特別でしょうね」 ある意味では本物の笑みを仮面にして、対峙する。 「それは光栄だね」 「ええ、とても」 どう拗れても構わない相手なんて、あなた以外には居ませんからね。 偽らずに付き合えるのを友だというのなら、 私の唯一の友人はかつて私を裏切った相手である。 そんな、下らないことを考えられる程には、勘が戻ったと言うことか。 まだ、朽ちてはいない。 まだ、戦わねばならない。 だから、私は――― 「僕は君が大好きだよ」 「ええ。私もです」
結構な露日スキーの私(笑) 漫画とかの方がテンポは良いんだろうな、と思いながら描けない苦しさ。 回りくどくならない場面の描写法が欲しい。 因みに、これは一応米日を前提としています。 追記: かなり昔の文章だけど、やっぱり露日はこのイメージなんですよね。