そらみたことか。
あなたは、何れその翼をもがれるんだ。
見下してきた者達と同じように、地上を這い回る。
いいざまだと言われながら。
醜い悪あがきでもすればいい。
自分が優れていたという過去に浸ればいい。
それでも、幸せだというなら
Perfect risk
「それで、どうするおつもりなのですか」
「どうするも何も、俺は自分の思った通り進むよ」
傲慢なひとだ。
傲慢で、それでいて、誰よりも純真だ。
子供のまま大きくなって、まだ飛べると信じている。
あなたがピーターパンでないことも、魔法使いでないことも、周りの人は知っている。
知っていて、誰も教えてやらなかった。
自分の利益にならないことは誰も進んでやろうとしないものなのだ。
或いは、単にあなたが聞かなかったか。
何れにせよ、あなたは飛び降りるんだ。
本当に飛べるかどうかは別として、だが。
「それが、正しくなくても?」
精一杯、冷たい口調を作って突きつける。
最後通牒よりも、余程、冷たい。
「俺が正しくなかったことなんてないよ」
あまりにも幸せな、少年。
自分を省みることもなく、全力で走りきることだけを良しとした。
底抜けに危険で、其れでいて…あくまでも純粋な存在。
きらきらとした、微笑みを向けてきた。
「そう、思わない?」
はいともいいえとも言えない。
それは、私が決めることではないのだ。
「そうだと良いですね」
主観的にも客観的にも良くできた返事だったろう。
ある意味で、私は彼に甘すぎる。
最後まで指摘しきることは、私には出来ない。
それによって彼にも、私にも不利益が発生すると知っていて、それでも言ってやらない。
「君ならそう言うだろうと思ったよ」
言葉の含みなど見て見ぬ振りをして、安直な肯定に変換している。
可哀相で、何よりも愛おしいあなた。
「少なくとも、私にとってあなたは必要なひとだ」
世界中があなたを裏切って、弾いても。
私には、必要なんだ。
「君がそんな風に言ってくれるなんて珍しいね」
目を眇めて、愉快そうに彼は言う。
「そうですか?」
返しながらも、内心ひやりとする物を感じた。
(あのひとに、似ていた。)
元々面差しが似ているとは思っていたが、本当に、そっくりだ。
彼よりもより子供で、手が掛かりはするがやはり同じ物を持っている。
「うん、いつもはそんな言い方しないよ。ただ、やっぱり君にそう言って貰えると嬉しいな」
彼にしても、私にしても、本質的に弱い存在であることに違いはない。
何かに、誰かに、凭れ掛かることで自己の安定を図る。
それが、生きるために必要な事なのだから仕方が無いではないか。
「それは良かった」
依存してくれる相手が欲しいだけなんだ。
別に、お前じゃなくて良い。
どこか、心のすごく深いところではそう思っているような気さえする。
ただ、それが本心なのかどうかわからない。
現に相手を求めているのだから、言い訳にも聞こえる。
時折思うのは、あのひとの代りにしてはあまりにもお粗末だな、ということ。
そして、自分はいつだって誰かに依存しなければ生きていけないということ。
そうして、私はあなたに偽りの翼を与え続ける。
あなたが、私を好いてくれている限りは。
あんまり物を考えずに書いた、突発…というかある意味で根底にあるイメージのような。
短いのは短いので分けようかなぁ…そろそろ。
あと、前もなんか言ってた気がするけど、甘い話書きたい。(笑)
追記
再利用にあたって、少しだけ書き直していたりいなかったり。